【小耳にはさんだおもろい話】
定年がうらやましい
作家・高橋秀実
私は、自営業なので定年がない。
若い頃は「いつまでも働けていいよね」などと羨ましがられ、それを真に受けたこともあるが、定年がなくても体力には限界があり、いつまでも働けるわけではない。
定年で辞めると、職場で花束などを受け取り、皆に見送られたりして、さぞかし寂しい思いをするのだろうと想像していたが、実際に親しい人たちが次々と定年退職していくと、定年がないせいで、私の方がひとり置き去りにされていくようである。
定年があれば「しばらくのんびりしたい」とか「第二の人生」などと言えるのだろうが、定年がないと、これまでもずっとのんびりしてきたような気がして、第二の人生どころか、第一の人生すらまともに送っていないことに終生苛まれるのではないだろうか…。
定年とは「定められた年」。と書く。
一体、誰が定めているのかと調べてみると、公務員を除き、この制度自体を義務づけた法律はどこにもない。
欧米では、原則的に禁じられており、どうやら日本独自の慣習のようなのだ。
考えてみれば、一定の年齢になると解雇されるというのは明らかな年齢差別である。
労働組合などが反対してもよさそうな制度なのだが、歴史を遡ると、組合側も「雇用保障」のために定年制を要求していたりする。
経営側は高齢者の排出のために定年制を望むわけで、労使が協調して「定年」を求めていたのである。
こうなると、これはひとつの伝統文化ではないだろうか。


●「定年」のルーツは大奥!
実は「定年」のルーツは、江戸時代の大奥だったらしい。
女性たちは30歳になると「裀褥御断り」になったという。
出産が難しくなるという理由で、殿様の相手を辞退させられた。
それに従わないと「好女」(色好みな女)と陰口を叩かれ、もめ事の原因になるからだそうだ。
その伝統は、明治以降も受け継がれ、工場などでも女性の定年を30歳としたり、結婚や出産を「定年」と見なしたりしていた。年齢差別に加え女性差別までしてきたわけで、やはりどこかで撤廃されるべき制度だったように思えるのだが、年齢が調整されるだけで、なぜか今も存続している。
●「停年」から「定年」へ
戦前までは「停年」と表記していたが昭和30年頃から「定年」に変わっている。
これは無意識のうちに「定め」というニュアンスを込めたのではないだろうか。「停年」だと、仕事を停止する年齢…
いかにも辞めさせられるようだが、「定め」なら宿命のようで従うしかない。
実際、定年退職した人々に会ってみると、みんな素直に受け入れているようだ。
「本当は辞めたくない」
「もっとやりたい仕事があった」
などと言う人はひとりもおらず、
「定年は定年だからね」と未練のようなものは、まったく感じられなかった。
再雇用される人も
「家にいると女房に怒られるが、会社なら誰にも怒られない」
と、会社を避難場所にしていたりする。 あれこれ思いを巡らすうちに私は、ハタと気がついた。定年は〆切のようなものではないかと。
定年も〆切も日付が決まっている。
生来の怠け者である私は、〆切がないと一文字も書けない。正直に言うと〆切になってから書き始め、なぜもっと前にやっておかなかったのかと後悔し、自らの文才のなさに打ちのめされたりするのだが、〆切時間がいよいよ迫ると、不思議なことが起こる。
自分の書いたものが突然、面白く思えてくる。切羽詰まると「これでいいんだ」と脳が錯覚を起こすようなのである。
原稿は直そうと思えば、それこそキリがない。どこかで納得して、キリをつけなければ…だから…
錯覚がなければ世に出せないわけで、錯覚を与えてくれるのも〆切なのである。
〆切がなければ、死が終わりとなるわけだが、死はいつ訪れるかわからない。
その点、定年という終わりは〆切同様に不動なのである。

●「定年」は「出家」のようなもの?
そういえば「出世」もこれに似ている。出世とは、もともと仏教用語で「世を出る」
つまり「出家」を意味していた。
ところが日本ではいつの間にか、世の中で成功すること、「世に出る」ことに変わっていった。
意味としては反対のことに転じたのだが、この町から出れば、隣町に出るように、世を出ると別の世に出るわけで、その過程を「出世」と呼んだのだろう。そう考えると「定年」も一つの出世なのだ。

【住職のひとこと】
「出家」とは、「出世」つまり「出世間」
世間から出ること。
つまり世間の価値観、これまでの価値観から脱出することです。
多くの金があることが幸せ…
いつまでも若いことが幸せ…
定年を機に脱出してみませんか?
| 月 | 日/曜日 | 時間 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年(令和8年) | ||||
| 毎月 | 第1(日) | 午前6時半 | おはよう講座 | 毎月 第1 日曜日 1月 第2 日曜日 |
| 中止第3(木) | 午前10時~午後3時半 | 福遊会 | 毎月 第3 木曜日 | |
| 8月 | 12日(火) | 午後1時 | 盂蘭盆会 | 法話:青木 馨 師 |
| 13日(水) | 午後7時 | 納骨堂 お盆会 | 寺内勤め | |
| 14日(木) | 午後7時 | 納骨堂 お盆会 | 寺内勤め | |
| 28日(金) | 午前10時/午後7時半 | 親鸞教室 | ||
| 9月 | 12日(土) | 午後1時 | 彼岸会 | 法話:梛野 明仁 師 |
| 30日(水) | 午前10時/午後7時半 | 親鸞教室 | ||
| 10月 | 12日(月) | 午前10時 | 秋の永代経 | 法話:戸松 憲仁 住職 |
| 午後1時 | 前住職ご命日 | 落語:三遊亭兼好 俗曲:桧山うめ吉 |
||
| 11月 | 12日(木) | 午後1時 | 開基・中興法要・相続講 | 法話:未定 |
| 12月 | 12日(土) | 午後1時 | 成道会(お釈迦様の命日) | 法話:織田 慶雄 師 |
| 2027年(令和9年) | ||||
| 1月 | 12日(火) | 午後1時 | 修正会 奉讃会 | 法話:堀田 護 師 |
| 2月 | 11日(木) | 午後2時 | こどもほうおんこう「人形劇」 | とんがらし |
| 12日(金) | 午後1時 | 報恩講 | 法話:安藤 伝融 師 | |
| 13日(土) | 午後1時 | 報恩講 | 法話:堀田 護 師 | |
| 3月 | 12日(金) | 午後1時 | 聖徳 太子会 奉讃会 | 法話:伊奈 祐諦 師 |
| 4月 | 12日(月) | 午後1時 | 永代経・蓮如忌 | 法話:小谷香示 師 |
| 5月 | 12日(水) | 午後1時 | 定例・奉賛会・宗祖誕生会 | 法話:戸田 恵信 師 |
| 6月 | 12日(土) | 午後1時 | 前々住職御命日 | 法話:戸田 栄信 師 |
| 7月 | 11日(日) | 午後1時 | お盆会 | 法話:戸松 憲仁 住職 |
| 12日(月) | 午後1時 | お盆会 | 法話:藤井 義尚 師 | |